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捨てたあと、どこへ行く?——世界のフードロス処分方法くらべ

世界では1年に約10.5億トンの食べものが捨てられています。では、捨てたあとはどうなるのか。アメリカは埋め、日本は燃やし、韓国は分けさせ、EUは法律で分別を義務づけました。同じ「捨てる」でも処分方法はまるで違い、地球にかかる負荷も変わります。この記事では、米国EPA・環境省・韓国環境部・EU/フランス政府が公表している数字だけを使って、フードロスの“その後”を国ごとに比べます。

2026年7月25日公開 / 本記事の統計はすべて記事末尾の一次資料(各国政府・国連・EUの公表値)からの引用です。写真はAIで生成した再現イメージです。

埋立・焼却・堆肥化——捨てられた食べものが向かう3つの行き先(AI生成の再現イメージ)

1. 捨て方には「順位」がある

比べる前に、ものさしを1本用意します。米国環境保護庁(EPA)は、捨てられた食べものの扱い方を望ましい順に並べた「Wasted Food Scale(食品廃棄の優先順位)」を公表しています。12段階あり、上から順にこうなっています。

順位扱い方(EPAの原語)意味
1Prevent Wasted Foodそもそも捨てない
2Donate寄付する
3Upcycle別の食品に作り替える
4Feed Animals家畜のえさにする(飼料化)
5Leave Unharvested畑に残す(収穫しない)
6Anaerobic Digestion(消化物を活用)発酵させてガスを取り、残りかすも使う
7Compost堆肥にする
8Anaerobic Digestion(消化物は処分)発酵させてガスを取るが、残りかすは捨てる
9Apply to Land土地に散布する
10Landfill埋め立てる
11Incinerate焼却する
12Send Down the Drain排水口に流す

下から3つ——埋立・焼却・排水——が「最も望ましくない」側です。EPAは理由もはっきり書いています。埋立は「埋立地の食品廃棄物がメタンという強力で短寿命の温室効果ガスを発生させるため」、焼却は「食品に含まれる価値ある栄養分が回収できないため」。

つまり捨て方に良し悪しがある、というのが各国の政策の出発点です。以下、この「順位表」を頭に置きながら4つの国・地域を見ていきます。

2. アメリカ——埋める国

広大な埋立地に運ばれる家庭ごみ(AI生成の再現イメージ)

アメリカは、順位表の下から3番目「埋立」がいまも主流です。EPAの推計(2019年)では、小売・外食・家庭などから出た食品廃棄物は6,622万トン。その行き先はこうなっています。

行き先割合
埋立3,962万トン59.84%
エネルギー回収を伴う焼却965万トン14.57%
堆肥化330万トン4.99%

残りは飼料化・嫌気性消化・下水放流などに分かれます(EPA・2019年データ)。

埋めた食べものはそこで静かに終わりません。地中で分解するときにメタンが出ます。EPAの数字を並べると、その規模が見えてきます。

指標数値
米国の人為的メタン排出に占める埋立地の割合(2022年)約14.4%=第3位
埋立地から大気に漏れるメタンのうち、埋めた食品由来58%
埋立ごみに占める食品の割合約24%
埋立ガスの成分約50%がメタン、約50%が二酸化炭素
埋立ごみの4分の1にすぎない食品が、埋立地から漏れるメタンの6割近くを出している。食べものは腐るのが速い分、ガスになるのも速いからです。

3. 日本——燃やす国

ごみ焼却施設のクレーンとピット(AI生成の再現イメージ)

日本は正反対です。環境省が2026年3月27日に公表した令和6年度の調査によると、ごみの処理はこうなっています。

指標令和6年度
ごみ総排出量3,811万トン(うち家庭から出る生活系ごみ2,637万トン=約69%)
直接焼却された量2,978万トン=総処理量の80.8%
直接埋立30万トン=0.8%
リサイクル率19.3%
最終処分量306万トン

アメリカが約6割を埋めているのに対し、日本が直接埋め立てるのは0.8%。国土が狭く最終処分場を確保しにくい事情から、日本は「まず燃やす」を選んできました。埋立地でメタンを出す量は、その分だけ小さくなります。

燃やした熱も捨ててはいません。同じ調査で、全国991のごみ焼却施設のうち415施設(41.9%)が発電設備を持ち、年間10,448GWhを発電しています。

ただしEPAの順位表では、焼却は下から2番目でした。理由は「栄養分が回収できない」から。生ごみに含まれる窒素やリンは、堆肥や飼料にすれば畑や家畜に戻せますが、燃やせば戻りません。埋立のメタンは避けられるが、資源としては一度きりで終わる——それが日本方式です。

日本の食品ロス量は年間461万トン(家庭系224万トン・事業系237万トン/2026年6月30日公表の2024年度推計値)。数字の詳しい内訳は世界の食品ロス最新統計と対策にまとめています。

4. 韓国——分けさせる国

集合住宅に設置されたICカード式の生ごみ計量機(AI生成の再現イメージ)

韓国は3つ目の道を選びました。捨て方を法律で変え、料金で行動を変えるやり方です。

まず2005年、韓国政府は食品廃棄物の直接埋立を禁止しました。埋められないなら、分けて資源にするしかありません。次に導入されたのが、捨てた量に応じて料金を払う従量課金制です。集合住宅では、住民カードをかざして生ごみを投入すると重さが自動で計測され、その分の料金が請求されるRFID方式の計量器が普及しました。

RFID計量器の普及自治体数対象世帯
2010年18自治体17万世帯
2021年167自治体652万世帯(集合住宅全体の56%)

結果として、韓国の生活系廃棄物(家庭などから出るごみ全体)の行き先は2024年時点でこうなっています。

行き先割合(2024年)
再活用(リサイクル)86.6%
焼却5.3%
埋立4.9%

この86.6%は生ごみだけの数字ではなく、家庭などから出る生活系廃棄物全体の再活用率です(韓国・気候エネルギー環境部/国家指標体系)。

日本のリサイクル率19.3%と並べると差は歴然ですが、集計の対象が同じではないため単純比較はできません。それでも、埋立を禁じて分別を料金と結びつけた国が、資源として回す方向へ大きく動いたことは数字に表れています。

5. EU・フランス——法律で分けさせる地域

ヨーロッパの街角に置かれた生ごみ専用の分別容器(AI生成の再現イメージ)

EUは、加盟国に対して期限つきの義務を課す方法をとりました。

ルール内容
廃棄物枠組指令 第22条2023年12月31日までに、生ごみ(バイオ廃棄物)を分別収集するか、発生源でリサイクル(堆肥化など)すること
埋立指令(2018/850)2035年までに、市町村廃棄物の埋立を10%以下に。2030年からはリサイクル等が可能な廃棄物の埋立を制限

効果は数字に出ています。EU全体で埋め立てられた市町村廃棄物は、1995年の1億2,100万トン(1人あたり286kg)から2024年には5,000万トン(1人あたり110kg)へ、59%減りました。2024年の内訳は、埋立110kg・焼却135kg・リサイクル+堆肥化247kg(いずれも1人あたり)で、リサイクル+堆肥化が48%を占めます。

なぜ生ごみを名指しで義務化したのか。EUの市町村廃棄物の構成をみると、バイオ廃棄物が28.8%(2023年)で最大の割合を占めているからです。ここを分けない限り、埋立10%以下という目標には届きません。

ただし目標は簡単ではありません。欧州環境機関(EEA)によれば、2023年時点で埋立10%以下を達成したのは11加盟国と非EUの2か国にとどまります。

フランス——家庭にも義務が来た

加盟国の実装例がフランスです。2020年の「循環経済のための廃棄物対策法(AGEC法)」により、2024年1月1日から生ごみの分別が、すべての事業者と個人に義務づけられました。自治体は住民に対して、分別収集か、コンポストなど身近な処理手段のどちらかを用意する義務を負います。フランス政府は、生ごみが「フランス人の分別されていないごみの3分の1」を占めると説明しています。

6. 4つの捨て方、こう違う

国・地域主な処分方法数字効いている仕組み
アメリカ埋立食品廃棄の59.8%が埋立(2019年)連邦レベルの分別義務なし。EPAは順位表で誘導
日本焼却ごみの80.8%を直接焼却/直接埋立0.8%(令和6年度)最終処分場の制約。焼却の4割超が発電を併設
韓国資源化生活系廃棄物の再活用86.6%(2024年)2005年の直接埋立禁止+捨てた量で払う従量課金
EU分別+脱・埋立埋立110kg/焼却135kg/リサイクル+堆肥化247kg(1人・2024年)指令で期限つき義務化(生ごみ分別・埋立10%以下)

それぞれの統計は集計の対象・年次・定義が異なるため、数字を横一列に並べて順位づけすることはできません。「その国が何を主な処分方法にしているか」の目安として読んでください。

7. なぜ処分方法で環境負荷が変わるのか

ここまで何度も出てきた「メタン」が、話の中心です。

食べものが酸素の少ない埋立地の内部で分解すると、メタンが発生します。埋立ガスはおよそ半分がメタンで、残りの半分が二酸化炭素です(EPA)。そしてメタンは、100年間で見て少なくとも二酸化炭素の28倍の熱を大気に閉じ込めます。

同じ1個のリンゴでも、埋めればメタンになり、堆肥にすれば土に戻り飼料にすれば家畜が食べる。捨て方を変えるだけで、地球にかかる負荷も、資源として残るものも変わります。

だからEPAの順位表は、埋立を下から3番目に置きました。逆に上位に来るのは、寄付・アップサイクル・飼料化——つまり食べものを食べものとして使い切る方向です。堆肥化や発酵(嫌気性消化)はその次。処分ではなく、資源として回すからです。

8. で、いちばんマシな捨て方は?

順位表の1位をもう一度見てください。「Prevent Wasted Food」——そもそも捨てないです。処分方法ですらありません。

これは各国の政策とも矛盾しません。韓国が埋立を禁じても、EUが分別を義務づけても、出てくる生ごみの量そのものが減らなければ、処理する施設も費用も増え続けます。そして国連環境計画(UNEP)の統計では、消費段階で捨てられる食べもの約10.5億トンのうち60%は家庭から出ています。順位表の1位に手が届くのは、行政でも企業でもなく、私たちの冷蔵庫です。

とはいえ「捨てない」は根性の話ではありません。多くの家庭で起きているのは、食べたくなかったのではなく気づかなかったという事故です。奥に入った食材、忘れた作り置き、いつ買ったか思い出せない調味料。期限が見えていれば、切れる前に食べ切る・買い足さないという判断ができます。

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よくある質問

日本の食品ロスやごみは、どのように処分されていますか?

日本はほとんどを燃やしています。令和6年度のごみ処理では、直接焼却された量が2,978万トンで、ごみの総処理量の80.8%にあたります。直接埋立は0.8%(30万トン)にとどまります(環境省・2026年3月27日公表)。ごみ総排出量3,811万トンのうち、家庭から出る生活系ごみは2,637万トンで約69%を占めます。

食べものを埋め立てると、なぜ環境に悪いのですか?

埋め立てられた食品が地中で分解するときにメタンが発生するからです。メタンは100年間で見て少なくとも二酸化炭素の28倍の熱を閉じ込める温室効果ガスです(米国EPA)。アメリカでは埋立地が人為的なメタン排出源の第3位で、2022年に人為的メタン排出の約14.4%を占めました。さらに、埋立地から大気に漏れ出すメタンの58%は、埋め立てられた食品由来と推計されています。

韓国の生ごみリサイクル率が高いのはなぜですか?

韓国は2005年に食品廃棄物の直接埋立を禁止し、捨てた量に応じて料金を払う従量課金制を全国で実施しているためです。集合住宅ではICタグで重量を計るRFID方式の計量器が普及し、2010年の18自治体・17万世帯から2021年には167自治体・652万世帯(集合住宅全体の56%)まで広がりました(韓国環境部)。2024年の生活系廃棄物は再活用86.6%・焼却5.3%・埋立4.9%です。

いちばん環境負荷が小さい「捨て方」は何ですか?

米国EPAが定めた「Wasted Food Scale(食品廃棄の優先順位)」では、最も望ましいのは処分方法ではなく「そもそも捨てない(Prevent Wasted Food)」ことです。次いで寄付、アップサイクル、飼料化と続き、埋立と焼却は最も望ましくない側に置かれています。埋立はメタンを出すため、焼却は食品に含まれる栄養分が回収できないため、と説明されています。

出典(一次資料)
米国環境保護庁(EPA)「Wasted Food Scale」——12段階の優先順位・埋立/焼却が最も望ましくない理由
epa.gov(Wasted Food Scale)
米国環境保護庁(EPA)「Food: Material-Specific Data」——2019年の食品廃棄量と行き先(埋立59.84%ほか)
epa.gov(Food: Material-Specific Data)
米国環境保護庁(EPA)「Quantifying Methane Emissions from Landfilled Food Waste」(2023年10月)——埋立地メタンの58%が食品由来・食品は埋立ごみの約24%
epa.gov(Quantifying Methane Emissions from Landfilled Food Waste)
米国環境保護庁(EPA)LMOP「Basic Information about Landfill Gas」——メタンはCO2の少なくとも28倍(100年)・埋立地は米国の人為的メタン第3位(2022年14.4%)・埋立ガスの組成
epa.gov(Basic Information about Landfill Gas)
環境省 報道発表「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和6年度)について」(2026年3月27日公表)
env.go.jp/press/press_03502.html
環境省「一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和6年度)について」(本体・直接焼却率80.8%/生活系ごみ2,637万トン/焼却発電)
env.go.jp(令和6年度 調査結果 PDF)
環境省 報道発表「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和6年度)の公表について」(2026年6月30日)
env.go.jp/press/press_05155.html
韓国 環境部(政策資料)「2005년부터 음식물류폐기물 직매립 금지」——食品廃棄物の直接埋立禁止
me.go.kr(音食物類廃棄物 直埋立禁止)
大韓民国政策ブリーフィング 環境部説明資料「음식물 감량·재활용 정책 강화할 계획」(2022年1月17日)——従量課金の全国実施・RFID普及状況
korea.kr(環境部 説明資料)
韓国 国家指標体系(e-나라지표)「생활, 사업장 폐기물 발생 및 처리현황」——2024年 生活系廃棄物の再活用86.6%・焼却5.3%・埋立4.9%(気候エネルギー環境部 資源循環統計部)
index.go.kr(廃棄物 発生および処理現況)
EUR-Lex「EU waste management law」——廃棄物枠組指令 第22条:2023年12月31日までに生ごみを分別収集
eur-lex.europa.eu(EU waste management law)
EUR-Lex「Landfill of waste」——指令2018/850:2035年までに市町村廃棄物の埋立を10%以下
eur-lex.europa.eu(Landfill of waste)
Eurostat「Municipal waste statistics」——EUの埋立/焼却/リサイクルの推移・バイオ廃棄物28.8%(2023年)
ec.europa.eu/eurostat(Municipal waste statistics)
欧州環境機関(EEA)「Diversion of waste from landfill in Europe」——2035年10%目標と達成国
eea.europa.eu(Diversion of waste from landfill)
フランス 生態移行省「Biodéchets」——2024年1月1日から生ごみ分別が全事業者・全個人に義務/未分別ごみの3分の1
ecologie.gouv.fr(Biodéchets)
UNEP「Food Waste Index Report 2024」——世界10.5億トン・うち家庭が60%
unep.org(Food Waste Index Report 2024)